2010年 07月 25日
第5話「登山」 |
いや~、ずいぶんお久しぶりです;
すみませんね、大分放置してて・・・
テストがあったり風邪をひいていたり・・・
大変でした。
気がつけばもう夏休み。
でも私は最近ずっと忙しかったり。
もうじき研修旅行にも行きますしね。
「ま、まだ山頂が見えないの・・・?」
「・・・森だしね」
デル・イド山に登り始めて、5日がたった。
最初は草原が続いていたけど、今は森林だ。
さっき木に登って確認したら、少し遠くからは植物が減っていた。
あと1、2日で辿り着くだろう。
「森を抜けてもまだかかりそうだよ」
「仕方ない。訓練を積んだトーアでも2週間はかかると聞いたしな」
「えぇ~・・・そんな・・・」
こんな感じでラクトとも結構普通にやれている。
ここが空気の薄い高山地じゃなかったら楽しい旅だった事だろう。
「・・・時にサルト」
「何?」
「気付いたか?」
「うん。誰かにつけられてるね」
「2、3日前からずっとよ」
「そうなの?僕は昨日気付いたけど・・・」
「俺もだ」
「何があるかわかんないしね。索敵範囲を広げてたの」
「そうか。クレアスは魔術系だったね」
「そ。これは私の杖」
「凶悪な形だな」
「いざってときには武器にもなるの。魔術使いの杖はこんなのばっかりだよ」
「じゃあ、それで殴って相手が怯んだ隙に距離を取るって事?」
「うん」
「なるほどな。魔術使いが戦争で活躍する訳だ」
僕達はつけられている事にすでに気付いてはいた。
それでもこんな他愛のない会話をしているのはもちろん相手を油断させるためだ。
僕が気付いてからある程度距離を詰められたけど、そこからあまり近付いてこない。
きっと、夜襲をかけるつもりなんだろう。
結局、この日の夜に襲われる事はなかった。
交代で見張りまでして警戒したのに、損した気分だ。
次の朝、また山を登り始めた。
もうすぐ森林も終わるだろう。
そんな事を思いながら山道を歩いていると、後の連中が距離を詰めてきた。
「来たね」
「うん」
「よし、始めるぞ」
後の連中は僕らが突然振り向いて構えだしたから、さぞ驚いた事だろう。
しかし、相手を驚かせたはずの僕達も違う形で驚く事となった。
なんと、つけてきていたのはあのヴェルス達だった。
「へぇ、よく俺達に気付いたな。褒めてやるぜ」
「まさかお前達がつけてきていたとはな」
「当たり前だ。お前らさえ潰せば俺の合格間違いなしだからな」
「汚いね」
「うるせぇ、甘ちゃんが。勝ちゃいいんだよ」
「最低」
「黙れ、死にたいのか?・・・まあいい。俺はやさしいからな。
降参して下山したら許してやってもいいぜ」
やっぱり嫌な奴だ。
まだ変な自信を持ってるし。
「誰が」
僕が何か言う前に、ラクトが先に答えていた。
「あん?何か言ったか?よく聞こえねぇよ」
「誰があんたなんかに降参するか、って言ったの!」
「ピーピーうるせぇ女だな。さすがに今のは聞こえたぜ。仕方ねぇから遊んでやるか」
「お前に俺達がやられるとは思えんがな」
「ほざけ。そんな事行ってグループ3の連中は俺にボコボコにされて泣いて謝ったけどな」
「あのさ、自分達のルートに戻ってくれないかな。僕達無駄な争いはしたくないんだ」
「じゃあさっさと降参しろよ。そうすれば俺も手を汚さずに済むしな」
「降参しないって言ってるでしょ!
そんな事したら何のためにここに来たのか解らないじゃない!」
「何を言っても無駄だ。こいつらはやる気みたいだからな」
「そういう事だ。さっさとやられてもらおうか」
この時点でもう腹は括った。
でも、気になる事があったから、聞かずにはいられなかった。
「ねぇ、何で君達はヴェルスなんかに従ってるわけ?」
僕の質問にケティスが答えた。
「ヴェルスと一緒にいれば、合格させてもらえるだろうし・・・」
「そんな事でいいの?実力で合格したいと思わなかったの?」
「それは・・・」
やはり、ケティスとバイルには迷いがあるようだ。
きっと、グループ3を攻撃したときも、罪悪感があったんだろう。
それにヴェイルにもひどい扱いを受けているんだろう。
「おい、俺の手下にくだらねぇ精神攻撃しないでもらえるか?」
やっぱりだ。
「しょうがない。やろうか」
「サルト・・・」
「本当は嫌さ。でも、仕方ないじゃないか」
「そうだな。こいつは叩きのめさないと解らないみたいだからな」
「下山できる程度にはしないとね」
「なめられたもんだな。俺がてめぇらなんかに負ける訳ないだろ」
「大した自信だな。見かけ倒しじゃないといいが」
「もう何したって許さねぇからな」
しばらく、沈黙が続いた。いや、一瞬だったかもしれない。
なにせ、初めての実戦だったんだから。
気付けば、ラクトがエレメンタルパワーを使って作った小さな岩を投げつけていた。
相手が避けてバラバラになった所を、僕が風で進路を塞ぐ。
空気が薄いので、麓よりは少しパワーが使いにくい。
後の2人に、クレアスが魔術で金縛りをかけた。
これで、動けるのはヴェルスのみ。
そこでラクトがヴェルスに向かって走り出した。
僕はすかさず追い風を送ってラクトを援護する。
斬り合いになったが、明らかにラクトが押している。
ここで僕はもう援護をやめた。
もう勝負はついたようなものだ。
案の定、ヴェルスはもう傷だらけだ。
それに対して、ラクトは余裕綽々だ。
ここで、ラクトは突然戻ってきた。
もう戦う必要がないと判断したらしい。
それをケティスとバイルは何とも言えない表情で見ていた。
いつの間にかクレアスはケティスとバイルの金縛りを解いていたようだ。
「僕達の勝ちだ」
「見逃してあげるから、自分達の山道に戻るなり、下山するなり好きにして」
「俺達は山を下りるよ」
「うん、次はこんな事せずに正々堂々と試練を受けるわ」
やっぱり、ケティスとバイルはいい人だった。
「おい、待てよ!俺はどうなるんだ!?」
「知らないよ。俺達はまたやり直すんだ」
「ふざけんなよ!手下だろ!」
「それはあんたが勝手に言ってた事でしょ」
「う、うるせぇ!もうお前らなんているか!さっさと消えろ!」
「そうさせてもらうよ。でも、最低限の食料と発煙筒だけは置いていくから」
「あたし達はもう行くから。じゃあね」
そう言うと、ケティスとバイルは山道を下りていった。
「君も早く行きなよ。食料が尽きるよ」
僕達はこれだけ言うと、また山を登り始めた。
しばらく登ると、どこかから叫び声が聞こえてきた。
多分、ヴェルスが怒って何かに八つ当たりをしていたんだろう。
このとき、僕達はヴェルスを完全に叩きのめしておくべきだった。
あんな事になるぐらいなら。
第5話「登山」 完
すみませんね、大分放置してて・・・
テストがあったり風邪をひいていたり・・・
大変でした。
気がつけばもう夏休み。
でも私は最近ずっと忙しかったり。
もうじき研修旅行にも行きますしね。
「ま、まだ山頂が見えないの・・・?」
「・・・森だしね」
デル・イド山に登り始めて、5日がたった。
最初は草原が続いていたけど、今は森林だ。
さっき木に登って確認したら、少し遠くからは植物が減っていた。
あと1、2日で辿り着くだろう。
「森を抜けてもまだかかりそうだよ」
「仕方ない。訓練を積んだトーアでも2週間はかかると聞いたしな」
「えぇ~・・・そんな・・・」
こんな感じでラクトとも結構普通にやれている。
ここが空気の薄い高山地じゃなかったら楽しい旅だった事だろう。
「・・・時にサルト」
「何?」
「気付いたか?」
「うん。誰かにつけられてるね」
「2、3日前からずっとよ」
「そうなの?僕は昨日気付いたけど・・・」
「俺もだ」
「何があるかわかんないしね。索敵範囲を広げてたの」
「そうか。クレアスは魔術系だったね」
「そ。これは私の杖」
「凶悪な形だな」
「いざってときには武器にもなるの。魔術使いの杖はこんなのばっかりだよ」
「じゃあ、それで殴って相手が怯んだ隙に距離を取るって事?」
「うん」
「なるほどな。魔術使いが戦争で活躍する訳だ」
僕達はつけられている事にすでに気付いてはいた。
それでもこんな他愛のない会話をしているのはもちろん相手を油断させるためだ。
僕が気付いてからある程度距離を詰められたけど、そこからあまり近付いてこない。
きっと、夜襲をかけるつもりなんだろう。
結局、この日の夜に襲われる事はなかった。
交代で見張りまでして警戒したのに、損した気分だ。
次の朝、また山を登り始めた。
もうすぐ森林も終わるだろう。
そんな事を思いながら山道を歩いていると、後の連中が距離を詰めてきた。
「来たね」
「うん」
「よし、始めるぞ」
しかし、相手を驚かせたはずの僕達も違う形で驚く事となった。
なんと、つけてきていたのはあのヴェルス達だった。
「へぇ、よく俺達に気付いたな。褒めてやるぜ」
「まさかお前達がつけてきていたとはな」
「当たり前だ。お前らさえ潰せば俺の合格間違いなしだからな」
「汚いね」
「うるせぇ、甘ちゃんが。勝ちゃいいんだよ」
「最低」
「黙れ、死にたいのか?・・・まあいい。俺はやさしいからな。
降参して下山したら許してやってもいいぜ」
やっぱり嫌な奴だ。
まだ変な自信を持ってるし。
「誰が」
僕が何か言う前に、ラクトが先に答えていた。
「あん?何か言ったか?よく聞こえねぇよ」
「誰があんたなんかに降参するか、って言ったの!」
「ピーピーうるせぇ女だな。さすがに今のは聞こえたぜ。仕方ねぇから遊んでやるか」
「お前に俺達がやられるとは思えんがな」
「ほざけ。そんな事行ってグループ3の連中は俺にボコボコにされて泣いて謝ったけどな」
「あのさ、自分達のルートに戻ってくれないかな。僕達無駄な争いはしたくないんだ」
「じゃあさっさと降参しろよ。そうすれば俺も手を汚さずに済むしな」
「降参しないって言ってるでしょ!
そんな事したら何のためにここに来たのか解らないじゃない!」
「何を言っても無駄だ。こいつらはやる気みたいだからな」
「そういう事だ。さっさとやられてもらおうか」
この時点でもう腹は括った。
でも、気になる事があったから、聞かずにはいられなかった。
「ねぇ、何で君達はヴェルスなんかに従ってるわけ?」
僕の質問にケティスが答えた。
「ヴェルスと一緒にいれば、合格させてもらえるだろうし・・・」
「そんな事でいいの?実力で合格したいと思わなかったの?」
「それは・・・」
やはり、ケティスとバイルには迷いがあるようだ。
きっと、グループ3を攻撃したときも、罪悪感があったんだろう。
それにヴェイルにもひどい扱いを受けているんだろう。
「おい、俺の手下にくだらねぇ精神攻撃しないでもらえるか?」
やっぱりだ。
「しょうがない。やろうか」
「サルト・・・」
「本当は嫌さ。でも、仕方ないじゃないか」
「そうだな。こいつは叩きのめさないと解らないみたいだからな」
「下山できる程度にはしないとね」
「なめられたもんだな。俺がてめぇらなんかに負ける訳ないだろ」
「大した自信だな。見かけ倒しじゃないといいが」
「もう何したって許さねぇからな」
しばらく、沈黙が続いた。いや、一瞬だったかもしれない。
なにせ、初めての実戦だったんだから。
気付けば、ラクトがエレメンタルパワーを使って作った小さな岩を投げつけていた。
相手が避けてバラバラになった所を、僕が風で進路を塞ぐ。
空気が薄いので、麓よりは少しパワーが使いにくい。
後の2人に、クレアスが魔術で金縛りをかけた。
これで、動けるのはヴェルスのみ。
そこでラクトがヴェルスに向かって走り出した。
僕はすかさず追い風を送ってラクトを援護する。
斬り合いになったが、明らかにラクトが押している。
ここで僕はもう援護をやめた。
もう勝負はついたようなものだ。
案の定、ヴェルスはもう傷だらけだ。
それに対して、ラクトは余裕綽々だ。
ここで、ラクトは突然戻ってきた。
もう戦う必要がないと判断したらしい。
それをケティスとバイルは何とも言えない表情で見ていた。
いつの間にかクレアスはケティスとバイルの金縛りを解いていたようだ。
「僕達の勝ちだ」
「見逃してあげるから、自分達の山道に戻るなり、下山するなり好きにして」
「俺達は山を下りるよ」
「うん、次はこんな事せずに正々堂々と試練を受けるわ」
やっぱり、ケティスとバイルはいい人だった。
「おい、待てよ!俺はどうなるんだ!?」
「知らないよ。俺達はまたやり直すんだ」
「ふざけんなよ!手下だろ!」
「それはあんたが勝手に言ってた事でしょ」
「う、うるせぇ!もうお前らなんているか!さっさと消えろ!」
「そうさせてもらうよ。でも、最低限の食料と発煙筒だけは置いていくから」
「あたし達はもう行くから。じゃあね」
そう言うと、ケティスとバイルは山道を下りていった。
「君も早く行きなよ。食料が尽きるよ」
僕達はこれだけ言うと、また山を登り始めた。
しばらく登ると、どこかから叫び声が聞こえてきた。
多分、ヴェルスが怒って何かに八つ当たりをしていたんだろう。
このとき、僕達はヴェルスを完全に叩きのめしておくべきだった。
あんな事になるぐらいなら。
第5話「登山」 完
by taklioss-gun
| 2010-07-25 02:07
| 生キ残ルベキ条件